温暖化とアイスクリーム市場:気候変動がもたらす販売トレンドの進化


日本国内では、年々温暖化の影響で最高気温が上昇しており、これが消費者のライフスタイルや嗜好に大きな影響を与えています。特に夏季においては、アイスクリームの需要が大幅に増加しており、2023年度の販売実績もその影響を色濃く反映しています。

2023年度のアイスクリーム市場は、販売金額が過去最高の6,082億円に達し、前年比で109.9%という顕著な成長を遂げました。この成長は、単に気温の上昇による需要の増加だけでなく、消費者が求める商品に対する価値観の変化にも支えられています。

まず、販売トレンドにおいては、高価格帯の商品が「ちょっとした贅沢」や「ご褒美」として消費者に支持されていることが顕著に見られます。原材料や物流費、人件費の高騰に伴い、2023年度には2度の価格改定が行われ、リッター単価は前年の605円から670円に上昇しました。この価格上昇にもかかわらず、アイスクリームは「身近な癒し」としての位置づけを強化し、消費者の購買意欲を維持しています。特に、アイスミルクやラクトアイスなどの高品質な商品が顕著な成長を示しており、こうした商品が「プレミアム感」を求める消費者層に響いていることがわかります。

次に、単価トレンドに目を向けると、過去10年間にわたりリッター単価は着実に上昇してきました。特に2023年度には大幅な値上がりが見られ、リッター単価は723円にまで達しました。この上昇は、温暖化による気温上昇が背景にある需要の拡大に支えられている一方で、原材料費やエネルギーコストの増加に対応するための価格設定の見直しが反映されています。さらに、価格が上昇しても売上が増加していることは、消費者が品質や価値に対してより高い対価を支払う意欲を持っていることを示唆しています。

その他のトレンドとしては、アイスクリームの「年間を通じて消費されるスイーツ」としての位置づけが強化されている点が挙げられます。従来は夏季限定の嗜好品と見なされていたアイスクリームが、今や年間を通じて幅広く消費されています。特に、スティックタイプやマルチパックのアイスクリームが好調であり、手軽に楽しめる形態の商品が人気を集めています。また、業務用アイスクリームの販売もコロナ禍からの回復を背景に増加しており、外食産業や観光業の回復と共に市場全体を支えています。

これらのトレンドは、温暖化という気候変動がもたらす影響を反映しつつ、消費者のライフスタイルの変化や価値観のシフトを巧みに捉えた結果であると考えられます。アイスクリーム市場は今後も気候変動や経済状況に応じて進化を続けると予想され、消費者の多様なニーズに対応した商品展開が一層求められるでしょう。

参照元: 一般社団法人 日本アイスクリーム協会「2023年度アイスクリーム類及び氷菓販売実績」資料


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